2012-01-01から1年間の記事一覧

茶渋の妄想

麦茶を入れて冷やしておくプラスチックのポットの底に、うっすらと茶渋がついているのを見つけた。長いブラシを突っ込んで掃除する。 ブラシが粗いせいか隅の方がきれいに落ちなかったので、古い歯ブラシで擦って落とすことにした。こういう時、古歯ブラシは…

出席しているのにレポートを出さない学生の謎

レポートを採点し成績表をつけていて、毎年不思議に思っていたことがあった。 私の授業ではたとえば100人履修届けを出していた場合、出席をクリアして単位認定試験(レポート)資格を得るのが80人前後。しかしその全員がレポートを提出しているかというと、…

読書メモ

話題性に流されて最近買った本。 独立国家のつくりかた (講談社現代新書)作者: 坂口恭平出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/05/18メディア: 新書購入: 19人 クリック: 814回この商品を含むブログ (89件) を見る『TOKYO 0円ハウス0円生活』を読んで興味を…

父との会話

入院中の父を夫と見舞いに行った。ちょうど昼食が終わったところで、父はベッドの上に起きていた。 「お父さん、気分どう?」 「‥‥‥ああ」 「お昼、全部食べた?」 「‥‥ここの食事は、おいしくない」 父は言葉がスムーズに出てこないようだった。目を瞑って…

夜の人

一週間に2日か3日、だいたい夜の9時頃から、夫と二人で家の近くを散歩するようになった。散歩と行ってもブラブラ歩きではなく、やや歩幅広めの早足でサッサと45分くらい。運動不足解消のため。 コースの三分の一は、田んぼの真ん中を通っている遊歩道であ…

「お母さんを、抱きしめたい!」と父は大声で言った

先日、父(87歳)は原因不明の激しい痙攣を起こし、意識不明となって救急車で運ばれた。救急車で搬送されるのは先月、先々月に続いて三度目だ。連絡を受けてようやく病院に駆けつけると、憔悴しきった顔の母(75歳)が入院の荷物を脇に、ポツンと廊下のベン…

父の娘たち・・・渡邉泰子と木嶋佳苗(‥‥そして私)

一週間ほど前に美容室で手に取った『婦人公論』誌上にて、北原みのりが東電OL殺人事件の被害者、渡邉泰子と、結婚詐欺・連続不審死事件の被疑者、木嶋佳苗との共通点を、「父の娘」であることだと書いていた。それが二人の性的逸脱行動になんらかの影響を及…

老人たち

父を介護している母を訪ねてまた実家に行くと、「今、これ読んでるの」と母が差し出した本が、『母の遺産 新聞小説』(水村美苗、中央公論新社、2012)だった。 母の遺産―新聞小説作者: 水村美苗出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2012/03メディア: 単行…

老いるということ

15歳になる飼い犬がいる。飼い主の無知と怠慢で12歳の時フィラリアに罹ったが奇跡的に助かり、薬を飲みながら生き長らえてきた。雑種の中型犬。それがこの数年で、すっかり老犬臭くなった。人間にしたら80歳を超えているのだから当然だ。おまけに心臓が弱い。…

引かれた線、「語り伝えよ」という伝言・・・『この空の花』感想メモ

Twitter上(東京方面)でえらいこと話題となっていた(『この空の花』スバル座最終日TW - Togetter)大林宣彦監督作品。名古屋の中川コロナ第2週目、6分くらいの入り。2時間40分という尺の長さと後半の音楽のこれでもか的盛り上げが個人的にはちょっとク…

原節子、死者の代理人

先日、ずっとかかりっきりだった原稿に一段落ついたので、一人で”小津トリエンナーレ”を開催した。”小津トリエンナーレ”とは三年に一回(くらいの割合で)、家にある小津安二郎の映画DVDを数日かけて観直すことである。『晩春』(1949)以降の作品のうちの10…

「人形を相手にしている女の子、あれは決して遊んでいるのではない」(読書メモ)

時代が病むということ―無意識の構造と美術作者: 鈴木國文出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2006/01/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 53回この商品を含むブログ (2件) を見る 『時代が病むということ 無意識の構造と美術』(鈴木國文、日本評論社、…

口腔の欲望

子どもの頃のアルバムの中の一枚。幼稚園に上がる少し前頃の私が、部屋の中で子ども用の揺り椅子に座り、両手に抱えた哺乳瓶に吸い付いている。とっくに乳離れしている年齢である。 母の話によれば、2歳下に妹が生まれ、彼女が哺乳瓶でミルクを飲み始めた時…

土と草

新学期が始まってバタバタしている間にもう三週間が過ぎてしまった。バタバタと言っても私は担当の授業や講義に行くだけだから、そうめちゃくちゃ忙しいこともないのだが、気分的にはバタバタする。そんなこんなでブログの更新もしてなかったし、仕上げなけ…

夢の男、ピグマリオンの恋

メディアを通して有名人や芸能人に恋をするというのはよくある。マンガやアニメやゲームを通して二次元のキャラクターに恋をするというのも多い。小説の中の顔の見えない登場人物に恋をするというのもある。ツイッターなどのやりとりを通じて相手に恋をする…

線を引く

文章を書いていると、自分だけのオリジナルな考えなどないなぁとつくづく思い知らされることが多い。大抵のことは既に過去の賢人たちが言い尽くしている。私も含めて凡人は、賢人たちが言い尽くしたことの断片の更に劣化したやつを、ゴニョゴニョと弄くり回…

「死ぬのは生きるより難儀」‥‥義父のこと

数日前の午後、義母(79歳)から電話がかかってきた。 「○○(夫)、いる?」 「今、ちょっと出かけてるけど。何かあった?」 「あの、お父さんが‥‥」 いつもと違う声の感じ。あまり要領を得ない義母の話を総合すると、こういうことだった。 その日の午前中、…

レポート要領

この間の記事に反応が多かったので、レポートについて。 単位認定に、テストではなくレポートを課しているケースは、どのくらいの割合であるのだろうか。私の行っている地方の芸術大学では少ないようだ。テストが多い。採点が楽だということもあるのかもしれ…

言い張れば通るという感覚 

大学の講義関係で出くわした例について今までも何回か書いたが、今回はこの10年で一番驚いたケースについて。*1 ある時、単位認定レポートの中にネット上にある映画の感想文からの剽窃を数件発見し、不可にして成績表を提出した。証拠としてそれぞれのアドレ…

音声

しっかり見ていたわけではないのでうろ覚えだが、芸術高校という設定の舞台が東京・佐賀町の元食糧倉庫だった古い雰囲気のある建物(一頃カフェやギャラリーも入っていた)で、美術教師が藤谷美和子、藤谷の片思いの相手が音楽教師の陣内孝則、生徒の一人が…

「女子」という自意識

独女通信編集部によると「最近では自分たちのことを言うのに、女子というのはふつうになっていると思います。女の子というと可愛すぎる。だから、中性的な『女子』が親しみやすく、照れ隠しという気持ちもある。また、アクティブな女性が多い昨今、女性とい…