2010-01-01から1年間の記事一覧

『オートマミー』(2000、SVAT THEATER)再見

■ストーリー 子育てを面倒に思った両親は通信販売で購入した育児ロボット「オートマミー」で わが子を隔離して育てていた。 ある日両親がモニターでチェックしてみると...。 ■スタッフ 監督・脚本・撮影 / 中田秀人 造型技術 / 松尾憲樹、細井浩和、藤原純子…

アコーディオンとランドセル

ナルセ先生が鼓笛隊のメンバーを募集していると知って、私の胸は踊った。 私、当時小学4年生。昭和40年代の話です。 私の行っていた小学校にその頃鼓笛隊はなかったが、何かのパレードでマーチングバンドの演奏を見たことはあった。先頭で指揮棒を上げ下ろ…

自画像をめぐる自意識

画学生が取り組む課題の一つに、自画像がある。手頃なモチーフがなくモデルも手配できず描きたい場所は遠過ぎる、そんな時でも困らない一番身近な対象、自分自身。だから、貧乏な画学生は絵の修練のためによく自画像を描く。 画家の自画像も面白い。自画像で…

罪悪感と復讐心

毎年、ジェンダー入門の授業で『風の谷のナウシカ』を見せて感想や意見を書かせている。7割くらいの学生がアニメは見たことがあるが、そのうちの半分以上は子供の頃であまりしっかり覚えておらず、漫画も読んだという学生は非常に少ない。そういう中で、今…

アートの幻想 --- 4. 受動性のアート

1. 資本主義カルチャーとしてのアート 2. 消費としての芸術体験 3. 忘却による反復 4. 受動性のアート 今「アート活動を行う」とは、アートを更新していくことではない。それはもうあらかじめ、すべてを受容し差異化していくアートの中に書き込まれている。 …

アートの幻想 --- 3. 忘却による反復

1. 資本主義カルチャーとしてのアート 2. 消費としての芸術体験 3. 忘却による反復 私が現代アートに興味を持ち続けてきた理由の一つは、それが自らを定義付けできないもの、あらゆる事象を受け入れ続けるものという点で、非常に特異だということだった。こ…

アートの幻想 --- 2. 消費としての芸術体験

1.資本主義カルチャーとしてのアート 2. 消費としての芸術体験 愛知県の豊田市美術館に、ヴォルフガング・ライプの展覧会を見に行った時の体験について書く。 ライプのそのインスタレーションは、長い時間をかけて彼が野山を歩き回り、さまざまな花から少し…

アートの幻想 --- 1. 資本主義カルチャーとしてのアート

10、デュシャン 現代芸術ってやったもの勝ちであることに早々に気づき、かつそれを自虐的に利用して「やったもの勝ち」の領域に堕すことの無かった奇才。以後の芸術家は、「美術史は第一世界大戦で終了しました」と言って憚らない自分の目から見れば、美術…

高橋氏とのブコメ議論まとめ

例の首都大の学生のやった件で、この数日、id:NaokiTakahashi氏(以下、高橋氏と表記)とのブコメ議論があちこちで長引いた。 個人的には、被害者の受けた苦痛と屈辱の前には、こんなアート論議などどうでもいいものだと思っているし、この事件についてアー…

プロとアマ、場所とお金と人の話‥‥‥月見の里学遊館のシンポジウム

先週お知らせしていたこのシンポジウムに出るために、この間の日曜日、静岡県は袋井市の月見の里学遊館に行ってきた。その時の模様をつらつらと。 しょっぱなから、掛川駅でこだまを降りて東海道本線に乗り換えるのにボーッとしていて反対方向に乗ってしまい…

お知らせ

今週末に、静岡県袋井市にある月見の里学遊館というところで、トークセッションに出ます。以下、月見の里学遊館HPより。 6/13(日) 月見の里自由大学シンポジウム 誰もが自己表現できる時代に、アーティストに残された役割とは? 13:00〜14:30 パネリス…

講評会

前記事に続いてデザインや美術学校関係の話。 美術、デザイン系の学校の生徒は、それ以外の学校の生徒がほとんど体験しないある「試練」を日常的に科せられる。 それは、衆目の中で作品を他人と比較され、批評されるということだ。 音楽だと順に演奏し、演奏…

ゲシュタルト崩壊する立方体

デザイン専門学校で受け持っているデッサンのカリキュラムの中に、幾何形態がある。立方体、円柱、円錐、四角錐、三角柱、球‥‥。誰でも大抵一度は描かされるモノだ。 セザンヌの有名な言葉で「自然界にあるのは円柱と円錐と球だ」というのがあるが、デザイン…

男であることのストレス

男女論になるとよく「主語が大き過ぎる」という指摘が出る。「男とは」「女とは」という語りによって、現実には多様な男や女を一括りにしている、一般化してしまっているという批判だ。「私はここには含まれない」「こうじゃない人もいる」という意見も時々…

女をモノ扱いするのは男の仕様、あるいは男の性の脆弱性と所有欲について

今週は、女をモノ扱いし女の人格を尊重しない男が世の中には多いので、女性にとって性的に欲望されることは単純に歓迎できないという話のブクマタワーがどんどん高くなっていくのを、あっけにとられて見ていた。 おそらくここでも、内容の是非というよりは話…

幸せの条件

前の記事で掲載したブコメ議論に追加があったので記事に加えた。 こういう話題はどうしても見た目、女性vs男性の図式で固まってしまいがちなのは仕方ない部分があるが、少し前の記事のコメ欄にまた別の角度のやりとりがあったので再掲しておく。 以下、こち…

男の価値観が変わらないのが問題vs男を敵視しないで

少し前のAntiSepticさんの記事のブコメでの、id:NATSU2007さんとid:simplemindさんの議論が興味深いので追ってみた(タグ、idコールは省略。時系列順に並べ直した。● がNATSU2007さん、○ がsimplemindさん。続きがあれば追加)。 http://b.hatena.ne.jp/entr…

石を投げてる先に私はいないよ(後ろにいるのにいい加減気づけ)

AntiSepticさんのこの記事を読んで、「『若者殺しの時代』は面白いけど、東ラブでレートが上がったのかな‥‥あのドラマのメッセージは「男の選ぶ女はいつの時代も同じ」。それへの回答が00年のやまとなでしこ/今相対的にはレートは下がってる(三低とか」と…

disり屋消毒が私をやたらと「レートを上げた女」にしているのだがどうしたものか。

堀井憲一郎の『若者殺しの時代』に言及しているAntiSepticさんの記事に突っ込んだ先日の続き記事2本(これとこれ)に、本人から反論をもらった。 大野左紀子は赤名リカである。プッw プププw - 消毒しましょ! これについて言いたいことは 東ラブ→やまとなで…

赤名リカとAV女優、ヘアヌードが「破壊」したもの、「破壊」できなかったもの - その2

赤名リカとAV、ヘアヌードが「破壊」したもの、「破壊」できなかったもの - その1 の続きです。 1991年 ラブストーリーを見て女子が勝手に恋愛レートを上げた 1991年 そのぶん男子のためのヘアヌードが安くなった 実に分かりやすい。「恋愛」は結婚と同義に…

赤名リカとAV女優、ヘアヌードが「破壊」したもの、「破壊」できなかったもの - その1

なぜ「ある日とつぜん、綺麗な女の子たちが、アダルトビデオに出るようになってくれた」のか。 - 消毒しましょ! これに乗っかって書くとまた「大野さんはオレのエントリが珍しくブクマ数を稼ぐと、自分は綺麗な女の子ともアダルトビデオとも全く無関係である…

「不道徳」な星の下に生まれついた私たちへ

※タイトルはこっちのコメントのやりとりからヒントを得ました(レタ田さん、ども!) はじめに、前回のエントリで「悪」という言葉を使ったら「何故ポルノが悪なんだ」「善悪で考えること自体がおかしい」といった意見がブコメなどで結構見られたので、再度…

「内心」は不自由だし、ポルノを楽しむのは「悪」だ

アンドロイドの人権と神さまとセカンド・レイプ - はてこはだいたい家にいる 「内心の自由」を巡ってのコメント欄の混乱が、ブコメにも波及している。 「内心の自由」とはもともと、憲法19条の「思想及び良心の自由」を下支えする概念だ。戦前の国家の思想統…

レイプ・ファンタジー、レイプ、レイプ神話と性差別

サイドバーのohnosakikoブックマークのところが、ポルノレイプレイプレイプエロゲバカレイプレイプエロゲバカポルノ‥‥となっていて正直気が滅入っている大野です。自分でつけてるブクマだから仕方ないけど、授業に来る新一年生に自分のブログアドレスを教え…

http://www.s-hoshino.com/f_photo/s_hana.html 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。美人は昔からよく花に喩えられる。職場の花、壁の華、○○の名花。「きれいな薔薇には刺がある」も、美しい女性をイメージしている。 古典的なポルノ小説などでは女…

お知らせ&雑記

去る3月29日の記事「鳥は自分の名前を知らない」が、ガジェット通信に掲載されました。 と言っても、後半部を大幅に書き換えてます。理由は当該記事の追記に書いてます。 ● 数日前、はてなよりメールで、 >この度は、はてなハイクをご利用開始いただき、あ…

父と芸術

子どもの頃、私に芸術への志向を植え付けたのは父だった。 父は一介の高校の国語教師だったが、ロマン派の音楽とルネサンス絵画を人類最高の芸術だと信じ、またロダンの彫刻と飛鳥の仏像をこよなく愛していた。 父の書斎には、広隆寺の弥勒菩薩の写真が飾っ…

おじさん三題

ダンサー 久しぶりに実家に行き、家の前で母と立ち話をしていたら、通りがかった初老の男性が微笑みながら「こんにちは」と挨拶したので、面識はなかったけれども反射的に挨拶を返した。 痩身で白髪をさっぱりと短く刈り込み、黄色いタータンチェックのシャ…

愛の起源

70年代の終わり頃、18歳の私は初めて男の人と付き合い、半年経って別れた。同じ頃、『話の特集』という雑誌を購読するようになり、そこで中山千夏を知った。ウーマン・リブという言葉がまだリアルなものとして生きていた時代である。 フェミニズム系の本には…

鳥は自分の名前を知らない

子どもの頃、文鳥を飼っていた。とてもよく慣れて、私の掌から餌を食べ、肩や頭に止まって休んだ。ピヨと名付け時々部屋の中に放って遊ばせていたが、「ピヨ、ピヨ」と呼ぶとパタパタと飛んでくるのが可愛かった。 文鳥が自分の名前を認識していたとは思えな…