音楽

戸川純の新曲に見え隠れする「天皇」のイメージ

わたしが鳴こうホトトギスアーティスト: 戸川純 with Vampillia出版社/メーカー: Virgin Babylon Records発売日: 2016/12/14メディア: CDこの商品を含むブログ (5件) を見る 去年発表された戸川純の35周年記念アルバムを、ずっと聴いている。ネット上のイン…

44年目の『鳥の歌』

クラシック音楽の愛好家だった生前の父は、若い頃にバイオリンを齧っていたが、それより好きな楽器はどうやらチェロであったらしい。女の子が生まれたらピアノ、男の子が生まれたらチェロを習わせたかったと(私が女の子だったのでピアノになった)。 もちろ…

昔の友人がお薦めしてくれたジャズのCD(ピアノ中心)

ジャズは古臭いと思ってるあなたに捧げる10曲 - AnonymousDiary ■( ・3・) クラシック好きの上司がジャズを聴きたいと言いだして - AnonymousDiary ■( ・3・) クラシック好きの上司がジャズを聴きたいと言いだして・続 - AnonymousDiary (追記:また出た) …

イージーリスニングの虜、アーティストの麻薬

佐村河内騒動で考える:松浦晋也のL/D 例の「交響曲第1番」の感想、NHKの「お涙頂戴」番組作り、新垣隆氏の仕事など論じられていることが幾つかのテーマに渡る長いエントリだが、終わりの方に書かれていたことについて思ったことをメモ。 現代音楽の売れな…

作曲家の”嘘”と視聴者の期待

聴覚障害の作曲家 別人が作曲 NHKニュース 人生中途で耳が聴こえなくなった作曲家が障害と闘いながら交響曲などを書き、CDを18万枚も売り上げ、NHKスペシャルでも感動の涙を絞っていたらしい。ところが実は耳の状態悪化で、十数年前から別の人に構想を伝えて…

父と言葉と『月光』第三楽章

記憶と言葉を失ったと思われていた施設の父に、言葉がほんの少しだけ戻ってきた。 てんかんを押さえる薬のせいで常時軽い麻酔がかかったような状態になっていた父は、今月初めに病院で薬を少し調整してもらい、その数日後、母のいつもの「お父さん、私は誰?…

時間について

内田樹の『街場の教育論』の中に、音楽について記した箇所がある。 大学の教養課程を論じるにあたって言及している孔子の「君子の六芸」(礼・楽・射・御・書・数)の中の「楽」が、音楽。これに似た内容は内田ブログでも見た気がするので、例によって繰返し…

現代アートとヴァイオリン少女

大学3年くらいだったと記憶しているので、今から30年前、80年代冒頭の話。 芸大の彫刻科は3年から素材によってコースが分かれており、私は金属を選択していた。そして、現代美術の底抜けの泥沼に足を踏み入れかけていた。 もちろんその時は泥沼などとは思…

奇想天外「毬と殿さま」

先日触れた『コドモノクニ名作選 vol.3』に、童謡のCDがついていた。 大正から昭和初期に作られて、以後ずっと歌われている童謡は案外多い。「赤い鳥小鳥」「かたつむり」「赤とんぼ」「アメフリ」「グッドバイ」「赤い靴」「青い目の人形」「七つの子」「夕…

『十五夜お月さん』と『四丁目の犬』

子どもの頃、ソノシート付きの童謡絵本のシリーズが家にあった。61年に始まったNHKの『みんなのうた』は新しい曲が多かったが、その童謡のソノシートは叙情的なマイナーコードのメロディが印象的な大正後期のものがかなり入っていて、私と妹は幼稚園から小学…

ソフトドリンク

「ビールもれっきとしたアルコール」ロシア政府がようやく認める - GIGAZINE これまでロシアではビールは「酒類」ではなく「食品」という扱いだったため、低価格で、スピリッツやワインなどの酒類と違い深夜でも露店でも販売することができ、広告の規制も厳…

アコーディオンとランドセル

ナルセ先生が鼓笛隊のメンバーを募集していると知って、私の胸は踊った。 私、当時小学4年生。昭和40年代の話です。 私の行っていた小学校にその頃鼓笛隊はなかったが、何かのパレードでマーチングバンドの演奏を見たことはあった。先頭で指揮棒を上げ下ろ…

プロとアマ、場所とお金と人の話‥‥‥月見の里学遊館のシンポジウム

先週お知らせしていたこのシンポジウムに出るために、この間の日曜日、静岡県は袋井市の月見の里学遊館に行ってきた。その時の模様をつらつらと。 しょっぱなから、掛川駅でこだまを降りて東海道本線に乗り換えるのにボーッとしていて反対方向に乗ってしまい…

芸術家の行く末

この間、ある集まりの後の飲み会で、爆笑問題の番組『爆笑問題のニッポンの教養』に坂本龍一がゲストで出演したという話が出た。誰もその回を見てなかったのだがその人の話によると、太田が好きな音楽としてサザンをかけると坂本はうんざりした顔をし、「歌…

「まんこ」を叫んだ日々

女の体で笑うということ - キリンが逆立ちしたピアス たくさんのブコメの中に、「まんこ」を連呼することに対していろんな反応があって興味深い。*1 上の記事に対する意見の一部。 「9割以上」が「女性」であったという「観客」と一緒に「おまんこおまんこ」…

また逢う日まで

前記事で触れた女装するおじさんについてぼんやり考えていて、思い出したのが映画『メゾン・ド・ヒミコ』(2005、犬童一心監督)です。メゾン・ド・ヒミコ 通常版 [DVD]出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2006/03/03メディア: DVD購入: 2人 クリック: 87回こ…

マイケルの被り物

仕事が休みのお昼前、何気なくテレビをつけたら、マイケル・ジャクソン死去のニュースが飛び込んできた。50歳。同い歳だ。合掌。 マイケル・ジャクソンは私にとってはまず、MTVの人だった。1984年、日本で深夜に放映されるようになったMTVを、当時バンドをや…

春一番

春一番どころかそろそろ春本番ですが、何年かぶりに花粉症になってしまった者にはつらいシーズンでもあります。薬を飲むと眠たくなるし。 「春一番」と言えば、キャンディーズです。あまりにも有名なアイドル歌謡の名曲。 なんでいきなりその話なのかという…

ギャップリアリズム

先日の記事についてのいくつかの言及の中で個人的に一番ウケたのは、こちらに書き込んでくれた人のコメントの一節だった。 そういえば忘れてたけど、ある年の母の日の翌日に花農家さんのところにいって、ビニールハウスいっぱいのカーネションをばっしばっし…

『世界にひとつだけの花』考

一部で盛り上がっていたので、いっちょ噛んでみます。 競争社会の淘汰圧に耐え切れずに一時退却するのは有りだと思うよ、もうこんな競争社会に居られないぜってドロップアウトするのも別に勝手だけど、それは自分が良く良く考えた上で自分の責任でしなきゃ成…

私たちの「祭り」、その失敗と責任 - 『ポケットは80年代がいっぱい』(香山リカ)を読んで

ポケットは80年代がいっぱい作者:香山リカバジリコAmazon カバーの紹介文から引用しよう。 一九八一年、サブカルチャー勃興期の渋谷。 伝説の”自販機雑誌”『HEAVEN』の編集部が、 香山リカの出発点だった。 「新人類」「ニューアカデミズム」「テクノ」「ニ…

失恋の歌とフロントホック・ブラ

先月一日に逝去した作詞家阿久悠の自伝を読んでいた夫が言った。 「おお、ジェンダーだな。おい、こりゃジェンダーの話だな」 「なによ。ジェンダージェンダーってうるさいな」 夫によれば、阿久悠以前の失恋の歌は、男が去って女がヨヨと泣き崩れるとか、去…

アネゴさま

昔 古い知り合いで、ショーコさんという五十代半ばの女性がいる。彼女は昔、名古屋でハックフィンというライブハウスを運営していた。 80年代、名古屋にはロックのライブハウスがいくつかあって、その中ではハックフィンはパンク、ノイズ、ニューウェイブ系…

ロシアには行ったことがない

歌声喫茶「ともしび」 この間、大島渚の『白昼の通り魔』(1966)を見た。大島渚は個人的にはもう一つハマれない監督だが、この作品はわりかし有名なのに未見だったので、一応見ておこうと。 冒頭近く、川口小枝という若い頃の杉田かおるそっくりの女優演じ…

憚られる名前

親につけてもらった名前でも、他人から見ると「こんな名前つけられると負担だろうな」とか「ちょっと恥ずかしいだろうな」といったものがある。 かなり前話題になった「悪魔」もそうだが、こうしたネガティブな名前ではない。そういうのでなくて、親のナルシ…

聖子よ腰を振れ

「愛ルケ」の珍事 最初に、松田聖子とは全然関係ない話題から。 渡辺淳一原作の東宝映画『愛の流刑地』の配役がやっと決まったとの発表があったのは、先月16日だった。 最初主人公役に決定していた役所広司@失楽園も、相手の女優がいつまでたっても決まらな…

『酒と泪と男と女』

こないだテレビをつけたら、橋幸夫が河島英五を歌っていた。 ♪いいか〜男は〜生意気ぐらいが丁度いい いいか〜男は〜大きい夢を持て〜 「ふん。「男」を「女」にして歌ってみれ」 と、私はどうでもいいツッコミを入れた。そしたら夫が言った。 「俺、男と女…

作品の時間

未来がこわい 私が時間について考える時、参照するのは映画と音楽である。映画も音楽も、後戻り不可能な時間の推移と不可分の関係にある。 それを言うなら、演劇も小説もそうなのかもしれないが、演劇の場合もし俳優が舞台で倒れたらそこで演劇の時間はスト…

コスプレの隙間

熊本のミック・ジャガー この数年、大人を対象にした音楽教室が増え、生徒は十万人を超える勢いだそうだ。中年のバンドブームのせいである。 アマチュア・バンドを組むオジさんは、30代後半から60代まで広範囲に渡るようだが、だいたい若い頃にバンドを組ん…

先生のお気に入り(続・伴奏者)

中学校の地雷 中学に入って最初の担任は、50がらみの金縁メガネをかけた音楽の女性教師だった。ちょっとしたことでヒステリックに怒り、一旦怒るとしばらくツンケンしているので、みんなビクビクしていた。 しかし早々に音楽方面に志望の決まっていた私は、…