社会

「不公平」感のもたらすもの

『誰も「戦後」を覚えていない』(鴨下信一、文春新書、2005)の中に、「間借り」について書かれた興味深い章がある。 「不公平」こそが終戦直後の基調音 ぼくは戦後日本の、特に終戦直後の日本の基調音となったものの重要な一つは<不公平>という感覚だっ…

ソフトドリンク

「ビールもれっきとしたアルコール」ロシア政府がようやく認める - GIGAZINE これまでロシアではビールは「酒類」ではなく「食品」という扱いだったため、低価格で、スピリッツやワインなどの酒類と違い深夜でも露店でも販売することができ、広告の規制も厳…

「寛容」という言葉

日本人が失ったのは「寛容」ではなく「身内」では? - シロクマの屑籠(汎適所属) 「昔の日本人が寛容だった」というのはあくまで「身内」に対してであり、かつてのような地域社会の密接な人間関係が崩壊した結果、「身内」と呼べるような相手がいなくなっ…

母なるものに覆われゆく社会 - 『トイレの神様」に感動し「タイガーマスク運動」に癒される

トイレの神様が大嫌いな奥様 この「トイレ」を連呼する曲の何がそんなにいいんだ?と首を傾げていてYouTubeに付いた絶賛コメントを見て仰天したのが半年ほど前だったが、当然アンチもいるわけで、上の2ちゃんスレには、小学生の作文で感動押し売り、老人受…

語られる7つの役割

若者は勝四郎たれ? 「今週は、内田樹のブログの『七人の侍』の組織論という記事にすごく反響があったけど」 「7つの役割の必然性を論じるのは、『七人の侍』論では定番だよね。リーダー、サブリーダー、イエスマン、「斬り込み隊長」たるエース、ムードメ…

第十六師団の山中貞雄

映画監督 山中貞雄作者:加藤 泰キネマ旬報社Amazon『映画監督 山中貞雄』(加藤泰 著、(株)キネマ旬報社、1985)を読み終えた。 山中貞雄の甥でやはり映画監督であった著者が、膨大な資料収集と関係者へのインタビューを経て、8年がかりで書き上げた労作で…

中村翫右衛門はルパン三世

山中貞雄(1909〜1938)の残存する三本のフィルムのうちの二本、『河内山宗俊』(1936)と先日取り上げた『人情紙風船』(1937)に、河原崎長十郎と中村翫右衛門のコンビが出演しているのだが、先日からDVDを見直していて思うのは、中村翫右衛門がルパン三世に似て…

「おばさん」という呼称

だいぶ前の友人の話。 彼女と旅行に行き、土産物屋に入っていろいろ物色していた。レジには歳の頃50代半ばくらいの中年女性が座っていた。やっと決まったお土産品をレジに持っていくと、その人は奥の座敷の方に引っ込んでしまったのかいない。そこで彼女が、…

プロとアマ、場所とお金と人の話‥‥‥月見の里学遊館のシンポジウム

先週お知らせしていたこのシンポジウムに出るために、この間の日曜日、静岡県は袋井市の月見の里学遊館に行ってきた。その時の模様をつらつらと。 しょっぱなから、掛川駅でこだまを降りて東海道本線に乗り換えるのにボーッとしていて反対方向に乗ってしまい…

男であることのストレス

男女論になるとよく「主語が大き過ぎる」という指摘が出る。「男とは」「女とは」という語りによって、現実には多様な男や女を一括りにしている、一般化してしまっているという批判だ。「私はここには含まれない」「こうじゃない人もいる」という意見も時々…

幸せの条件

前の記事で掲載したブコメ議論に追加があったので記事に加えた。 こういう話題はどうしても見た目、女性vs男性の図式で固まってしまいがちなのは仕方ない部分があるが、少し前の記事のコメ欄にまた別の角度のやりとりがあったので再掲しておく。 以下、こち…

男の価値観が変わらないのが問題vs男を敵視しないで

少し前のAntiSepticさんの記事のブコメでの、id:NATSU2007さんとid:simplemindさんの議論が興味深いので追ってみた(タグ、idコールは省略。時系列順に並べ直した。● がNATSU2007さん、○ がsimplemindさん。続きがあれば追加)。 http://b.hatena.ne.jp/entr…

石を投げてる先に私はいないよ(後ろにいるのにいい加減気づけ)

AntiSepticさんのこの記事を読んで、「『若者殺しの時代』は面白いけど、東ラブでレートが上がったのかな‥‥あのドラマのメッセージは「男の選ぶ女はいつの時代も同じ」。それへの回答が00年のやまとなでしこ/今相対的にはレートは下がってる(三低とか」と…

disり屋消毒が私をやたらと「レートを上げた女」にしているのだがどうしたものか。

堀井憲一郎の『若者殺しの時代』に言及しているAntiSepticさんの記事に突っ込んだ先日の続き記事2本(これとこれ)に、本人から反論をもらった。 大野左紀子は赤名リカである。プッw プププw - 消毒しましょ! これについて言いたいことは 東ラブ→やまとなで…

赤名リカとAV女優、ヘアヌードが「破壊」したもの、「破壊」できなかったもの - その2

赤名リカとAV、ヘアヌードが「破壊」したもの、「破壊」できなかったもの - その1 の続きです。 1991年 ラブストーリーを見て女子が勝手に恋愛レートを上げた 1991年 そのぶん男子のためのヘアヌードが安くなった 実に分かりやすい。「恋愛」は結婚と同義に…

赤名リカとAV女優、ヘアヌードが「破壊」したもの、「破壊」できなかったもの - その1

なぜ「ある日とつぜん、綺麗な女の子たちが、アダルトビデオに出るようになってくれた」のか。 - 消毒しましょ! これに乗っかって書くとまた「大野さんはオレのエントリが珍しくブクマ数を稼ぐと、自分は綺麗な女の子ともアダルトビデオとも全く無関係である…

オリーブ少女と森ガール、または「思想」(トンガリ)から「生活」(まったり)へ

「森ガール」を巡るネット議論 少し前に話題になっていて、とても興味深かった。以下、出てきた順に。 中川大地「「森ガール」にできること〜「少女」から「女子」への変遷の中で」 - ビジスタニュース議論の発火点で、わりとざっくりまとめた感じの記事。そ…

すれ違い夫婦と『賢者の贈り物』

妻に内緒で借金 夫に告げずに預金…淀川の妻子3人殺害:ニュース:関西発:YOMIURI ONLINE(読売新聞) 夫婦すれ違いの悲劇 大阪市淀川区の住宅で1月、調理師浜田誠容疑者(42)が500万円の借金を苦に妻子3人を殺害し、無理心中を図った事件で、同容…

大阪府の障害者支援のアート事業がよくわからない件

ラピュタ模倣で最優秀賞取り消し…大阪府主催の公募展:社会:スポーツ報知 短いので全文掲載。 障害がある人が創作した現代アートを展示する大阪府主催の公募展で最優秀賞を受けた絵画が、宮崎駿監督の映画「天空の城ラピュタ」のキャラクターの模倣であるこ…

ケニアのビジネスマン

アフリカが発展しない理由 - Chikirinの日記 大変にブクマを集めている。アフリカへのこれまでの数々の援助資金は「一切、未来につながらず、その日の食料と指導者のポケットに消えていく」という状況について、Chikirinさん曰く、 これらの本を読んでのちき…

WANに記事掲載&WAN労働争議関連

1月17日の記事が、NPO法人WAN(WOMEN'S ACTION NETWORK)に掲載されています。 【ライブ中継への反響・その3】これが男の生きる道? - 上野千鶴子vs渋谷知美、‥‥‥そして橋本治 書籍引用部を中心に元の文章より少し短くしています。記事に目を留めて下さっ…

働くということ、あるいは盗んで食っちゃ寝

※トラバ先の方のタイトルは「働くということ」だけになっています。なんか今いちものたりないなと思い、後で後半を加えたので(ごめんなさい)。 小飼弾「働かざるもの、飢えるべからず。」を読んで - phaのニート日記 少し前に「ニート代表」としてテレビ出…

ブコメにお返事

先日のこれが男の生きる道?- 上野千鶴子vs澁谷知美、‥‥‥そして橋本治についたブックマークコメントのいくつかについてコメントを返したかったのですが、ブコメでは書ききれないので、エントリ立てました(追加あるかも)。再度のご意見などありましたら、当…

これが男の生きる道 ? - 上野千鶴子vs澁谷知美、‥‥‥そして橋本治

新春爆笑トーク 上野千鶴子vs澁谷知美「男(の子)に生きる道はあるか?」(対談のウェブ中継) このイベントの告知、内容紹介はこちら 中継を見て、ブックマークコメントに、 「爆笑」できない/澁谷本は男子のための癒し(ガス抜き)本?という印象。上野…

貧乏人はこっそり猫を飼え

少し前に、「生活保護者は猫を飼うな」という増田記事があった。 将来、仕事も家も失って生活保護のお世話にならないとも限らず、その時に、うちの今春14歳になる老犬はたぶんもういないだろうが、1歳半の猫はもしかしたら生きている可能性もあるので、人ご…

闇から闇に葬らないこと - 性犯罪の特徴と問題

もう何年も前のことだが某学校で、ある女子学生が「以前に教師からセクハラを受けた」という旨のメールをくれたことがあった。 それによると授業後お茶に誘われ、とてもいい先生だと思っていたので応じたら、それから食事などにしつこく誘われるようになり、…

曾野綾子とミニスカート

産経新聞に掲載された曾野綾子の「用心するということ」というエッセイが、この数日、ネット上でえらい顰蹙を買っている。産経新聞に謝罪を求める抗議運動まで起こっているようだ。批判記事には多くの反応が集まっている(その一つ、強姦するのが男の性なら…

コペル君と豊田正子 - 1930年代の教養主義と格差

『君たちはどう生きるか』のエリーティズム 最近、4年前に書かれた『グロテスクな教養』(高田理惠子、ちくま新書)の書評のブログ記事をたまたま見かけた。私がこの本を読んだのもやはり4年ほど前だったが、第一章の「教養、あるいは「男の子、いかに生く…

小津と成瀬の「やれやれ」と結婚詐欺女

去年のことだが内田樹がブログに、小津安二郎の戦後の映画はほとんど「娘を結婚させる話」だと書いていた(こちらの記事で言及)。1950年前後から後のホームドラマは確かに、周囲の大人がよってたかって年頃の娘を何とか結婚させようとする話が多い。 一向に…

制作だけで食べていける人、いけない人

才能のない子にどうやって美術への進路を思いとどまらせるか 芸大を出て、作家活動をしながら十数年美術系の予備校講師、その後美術系大学非常勤講師(六年前に美術作家は廃業した)をしてきた立場から見ると、いろいろ思うところはあるが、基本的にはどんな…