社会

ホームレスの女

地下鉄の改札を出て5、6メートル歩いた時、初めて女のホームレスを見た。 もちろんそれまでホームレスの女を見たことはあった。テレビで見た中年夫婦のホームレス、繁華街でショッピングバッグを沢山持ったおばさんのホームレス、子どもの頃見た筵を敷いて…

痴漢と心太

高校一年の頃(かれこれ34、5年前)、朝の通学時に同じバス停から同じバスに乗る中年の男がいた。バスの座席はいつも6割方塞がっており、その人が私の隣に時々座ることを最初はあまり気に留めていなかった。 ある日、隣に座った男は新聞を広げた。その肘が…

理解の仕方と「正しさ」の行方 - セクハラ騒動について個人的に

※本文中で言及したaozora21さんのブクマコメントについては、御本人から本記事メタブクマでご指摘があり、再追記しております。 前記事の本文(付記は除く)では、なるべく私的意見や価値判断を含めず、あくまで一般的なセクハラ概念の説明を試みた。私の立…

あちこちでセクハラの解釈がぐしゃぐしゃになっていて

かなり混乱しているような気がするので、個人→個人へのセクハラの必要十分条件、その他最低限言えそうなことをメモしておきます。 ■ 相手が「セクハラだ」と言ったらすべてセクハラになるのか。 なりません。セクハラとなるには、以下の2点を共に満たしてい…

「女が仕事を頑張っても意味がないのか」を読んで

■女が仕事を頑張っても意味がないのか 日本で一番か二番ぐらいに偏差値の高い大学を卒業して、 2chの就職偏差値でも上位に位置する企業に総合職として勤めています。 周りの女の子見ていると一般職でそこそこ勤めて愛する彼氏と結婚→同居している子がちら…

「"村上春樹"的なるもの」について

村上春樹氏 エルサレム賞受賞-村上春樹という問題 - 無造作な雲 村上春樹エルサレム賞受賞に関する一連の議論の中では、この記事がもっとも深く問題の在処を捉えたものだと私は感じたが、コメント欄ではさらに掘り下げられていた。重要なことが書かれている…

個性は獲得目標ですらない

美術教育方面の話に絡んだ「個性」関連のエントリが賑わっている。 そもそも君らに個性などない - 地下生活者の手遊び 個性は本当に獲得するものなのか?- ハックリベリーに会いに行く 個性とは、他人から独自のやり方であると認められたものに過ぎない。個…

彼女さえいれば?

掲示板では職場への不満のほかに、女性や孤独についての言及も多い。「彼女がいれば夜逃げする必要なかったし」「彼女がいない、ただこの一点で人生崩壊」(6月5日5時18〜19分)。「一人の虚しさは異常」(6月5日午後1時20分)「友達もできない俺に彼女がで…

本音と自滅の時代

「本気の時代」- 消毒しましょ!でAntiSepticさんは、東浩紀や大澤真幸や呉智英を援用し、「理想の時代」の終幕を告げる三島由紀夫の割腹自殺(1970)という「本気」と、その後の「虚構の時代」(呉智英の言葉では「実務の時代」)にオウム真理教団というか…

『世界にひとつだけの花』考

一部で盛り上がっていたので、いっちょ噛んでみます。 競争社会の淘汰圧に耐え切れずに一時退却するのは有りだと思うよ、もうこんな競争社会に居られないぜってドロップアウトするのも別に勝手だけど、それは自分が良く良く考えた上で自分の責任でしなきゃ成…

お前のその言葉は、お前の欲望を裏切っていないか

一昨日、横浜国大人間教育科学部のマルチメディア文化課程というところで講義をしてきた。「メディア基礎論」という主に一年生対象の授業。複数の教官が持ち回りで担当しており、そのうちの一人の清田さん(前、名古屋芸大にいらしてそれ以外でも交流がある…

私たちの「祭り」、その失敗と責任 - 『ポケットは80年代がいっぱい』(香山リカ)を読んで

ポケットは80年代がいっぱい作者:香山リカバジリコAmazon カバーの紹介文から引用しよう。 一九八一年、サブカルチャー勃興期の渋谷。 伝説の”自販機雑誌”『HEAVEN』の編集部が、 香山リカの出発点だった。 「新人類」「ニューアカデミズム」「テクノ」「ニ…

芸術、あるいは「人の感性を批評するな」について(tadashiさんへのお返事)

ラッセンは何の恥部だったのかのコメント欄で、tadashiさんが不快感を表明されています。いろいろ興味深い問題を孕んでいると思ったのと、レスが長くなりましたので、別エントリを立てます。特別批判の意図はあるのではないことを、最初にお断りしておきます…

ラッセンとは何の恥部だったのか

※追記あります。 拙書を読んで下さった人から面白いメールをもらった。「ところでラッセンって何だったの?」という話(本の内容とは直接関係ない)。 ‥‥ラッセンか。そう言えばいたなそんな人が。 ハワイの海やイルカの絵を描いているあのラッセンです。御…

「ミソジニー」といかに付き合うか

「非モテ」と言うより「ミソジニー」の問題のような - NC-15 お前ら今日からミソジニーって言葉使うの禁止な - AnonymousDiary 「ミソジニー」は女性嫌悪、女性蔑視の意。男性→女性だけでなく、女性→女性もある。男性嫌悪は「ミサンドリー」(Wikipediaの解…

ブログとカラオケは似ているけど違う

ブログとはカラオケである - しあわせのかたち sho_taさんが、カラオケとブログの共通点について記事を挙げていました。面白いので私も書く。*1 元ネタとなっている『大人は愉しい』(冬弓舎刊/鈴木晶・内田樹著)は未読だが、二つの共通点が「要・観客、素…

「美人○○」に潜在する女性恐怖

昨日の記事「美人○○」と「女性○○」について、はてなブックマーク(とそのブックマークとそのまたブックマーク)でid:Midasさんとやりとりをさせて頂きましたので、抜き出しておきます(日付はすべて本日、id:の部分は省略)。 Midas 「美醜」ではなく労働と…

「美人○○」と「女性○○」

前日の記事の続きです。 「美大講師」を「美人講師」と一瞬見間違って恥ずかしくなった理由は、今思うと二つある。 一つは、「おまいさん、いい歳こいてどんだけナルシシズムに汚染されとんだ」。これについてはそう説明はいらない(というか恥ずかしいので…

「マッチョ」と「ウィンプ」の何故何故論

「何故?」という問いを巡って、一部で盛り上がっていました。とても興味深く面白いテーマです。 「何故ですか?」「理解できない」に潜む否定的意味 - suVeneのあれ 【要約】 「何故ですか?」には、純然たる質問の場合と、相手の意見に対する否定的意味合…

アートと「保養」とビジネス

『自分探しが止まらない』が話題の速水健朗氏ことid:gotanda6さんに、この本を「書評していただきたい」とIDコールされたのですが、今いち食指が動かなくて困ってます。 『客はアートでやって来る』というタイトルでもわかるように、アートを使った経営ビジ…

「反省の日」に(レイプとレイシズム)

沖縄駐留米軍海兵隊員による女子中学生暴行事件について、あちこちで記事が上がっているが、二つ論点があるように思った。 一つは産経新聞客員論説委員花岡信昭氏の記事中の、 「知らない人についていってはダメ」。筆者などの世代は子どものころ、親から口…

煩悩写真

どこで見たとは言わないが、こちらでリンクした先について「20年くらい前の写真」と書かれてもうた。あれが29歳って‥‥あんまりじゃありません? せめて「10年くらい前」と言われれば若く見られたと喜ぶが。 20年も昔の写真を出したら、何度か会っている担当…

DVについての講演会が中止された件

既にいくつかのブログで取り上げられていますが、ここでも遅ればせながら記事にしておきます。 20日に茨城県つくばみらい市主催で開催が予定されていた、「東京フェミニストセラピーセンター」所長平川和子氏のDVをテーマにした講演会が、反対団体の100件を…

同じヌードでも‥‥

あちこちで話題になっていた、例の岩手県の蘇民祭の「胸毛男性写真ポスターがセクハラ」問題。 http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080108k0000m040136000c.html それについてのこちらの記事の批判は的を得ていてほぼ同意だが、別の角度から考察してみ…

個人的と言えば個人的で

個人的でないと言えば個人的でないことで、これは書いていいのかよくないのか、むしろ書いとかないといけないことなのかずっと迷っておりまして‥‥ええい、前置きはいいからさっさと言いやがれ! はい。 実は、去年5月初めて私が本を出した出版社であるところ…

「おばさん」というもの

「おばさん」関係記事が賑わっております。 かわいいとうつくしい5 それがゾンビの生きる道ぃ♪(兎美味し 蚊の山) 早くおばさんになりたかった(深く考えないで捨てるように書く) おんなであること(メモ)※現在、プライベートモードです。 おばさんよりは…

あげたりもらったり

お中元と誕生日プレゼント 「人に物をあげるのが好きか、好きでないか」でいうと、夫はかなり好きな方だ。もう25年間も四人の人にお中元を律儀に贈り続けていたり、ちょっとどこかに行くと「これ、○○君に買ってったろか」「△△さんの好きなやつがあった」と、…

躓きの石とともに

「子供」(ドロシー・ロー・ノルト) この詩は、以前仕事していた短大の保育科の教室に貼ってあるのを見たことがあり、その時は「ふーん、子供は褒めて伸ばせってことか。でもなんか説教臭くて好きじゃない」くらいにしか思わなかった。 で。改めてこの詩を…

「合コン」はやめよう

査定の恐怖 「合コンに参加して相手を見つけるというような合目的っぽい行動は、自意識がジャマしてできません。棚からボタ餅ってないの?」(乱暴な意訳)という草実さんの記事と、それを取り上げたショータさんの記事、そして「合コンはいけないことですか…

ブロガーのルックスを云々すること

オフ会レポートを書かなかった理由 はてな界隈のオフ会に参加した私のリアル発言を引いた瀧澤氏の記事にこういう反応があって、草実氏のところ(コメント欄も参照)でも取り上げられた。その捕捉として。 瀧澤氏の記事のコメント欄で私が名前を出した人々は…