思い出

カンディンスキーの「あれ?」と地図をひっくり返した小学生

デザイン専門学校のデッサンの時間、幾何形態の形の狂いに気づかないで描いている学生に、「紙を横向きにしてみて」と言う。なんで?という顔をしながら画用紙をぐるっと90度回してみると、「あれ?」。なんか変。 形の間違いがそのままで発見できればそれに…

寂れゆく街、消えゆく店

中古でいいから一戸建てに住みたいという夫の願望とマンションでは制作がしづらいという私の不満が一致し、経済状態を鑑みた上で名古屋からJR快速で10分のこの一宮市に店舗付き中古住宅を買って引っ越してきて、もう18年になる。*1 戦後、繊維で栄え全国から…

アコーディオンとランドセル

ナルセ先生が鼓笛隊のメンバーを募集していると知って、私の胸は踊った。 私、当時小学4年生。昭和40年代の話です。 私の行っていた小学校にその頃鼓笛隊はなかったが、何かのパレードでマーチングバンドの演奏を見たことはあった。先頭で指揮棒を上げ下ろ…

父と芸術

子どもの頃、私に芸術への志向を植え付けたのは父だった。 父は一介の高校の国語教師だったが、ロマン派の音楽とルネサンス絵画を人類最高の芸術だと信じ、またロダンの彫刻と飛鳥の仏像をこよなく愛していた。 父の書斎には、広隆寺の弥勒菩薩の写真が飾っ…

ケニアのビジネスマン

アフリカが発展しない理由 - Chikirinの日記 大変にブクマを集めている。アフリカへのこれまでの数々の援助資金は「一切、未来につながらず、その日の食料と指導者のポケットに消えていく」という状況について、Chikirinさん曰く、 これらの本を読んでのちき…

大人の便箋と勉強のできる男の子

用がなくても、文房具店に行くのは楽しい。ずらりと並んでいるノートやボールペンや色鉛筆。それらのすべてが(当たり前のことだが)まだ誰にもまったく使われていない、ピカピカの新品のまま。なんだか興奮する。学校に入学したり進級した時に、新しいノー…

修学旅行

先週、修学旅行らしい学生たちを駅で見かけた。修学旅行を一学期に行う学校も多いようだが、やはり10月から11月にかけてがそのシーズンだ。 子供の頃、幼稚園を休んで、高校教師の父の引率する修学旅行に付いていったことがある。昭和30年代の話。昔のアルバ…

晶文社が文芸編集部門を閉鎖したというニュース

あちこちで話題になっていたのに今頃気づく。↓こちらに関連記事がまとまっている。 晶文社が文芸編集部門を閉鎖 - 【海難記】Wrecked on the Sea 上の記事でもリンクされている8/30付けの朝日新聞記事では、「文芸一般書の新刊については、今までの半分以下…

減らないワイン

よしもとばななさんの「ある居酒屋での不快なできごと」- 活字中毒R。 はてなブックマークの数が今日21時40分の時点で800を超えている上に、ほぼ全員がコメントしている。言及記事も30件以上。誰でも何か一言言いたくなるエピソードなんだろうなぁと思った。…

「まんこ」を叫んだ日々

女の体で笑うということ - キリンが逆立ちしたピアス たくさんのブコメの中に、「まんこ」を連呼することに対していろんな反応があって興味深い。*1 上の記事に対する意見の一部。 「9割以上」が「女性」であったという「観客」と一緒に「おまんこおまんこ」…

処女喪失

処女とはなにか - nubiangoat 処女礼賛をベースにした男性の文章を読んでいると、「やれやれ」な感じがしてくることが多いのだが、これはあまりそう感じなかった。文体のせいもあると思う。自分に処女信仰があることは認めた上で、その感覚の源を真面目な態…

父の懐中時計

結婚した時、実家の父が夫に、自分の持っている懐中時計を贈った。父は懐中時計が好きで、コレクションというほどではなかったが幾つか持っていた。義理の息子に、自分の持ち物の中から何か記念になる物をやりたいと思ったのだろう。 その時計は鎖の付いた直…

引き出しの中のお花畑

‥‥という言葉から、一見地味な女のクローゼットの引き出しの中が、色とりどりの勝負下着でお花畑のようになっている‥‥という実に安易な連想しか働かなくなってしまった私だが、その昔、ある引き出しの中にそれとは違う「お花畑」を発見したことがあった。 そ…

I さんのお墓参り

この間の日曜日、昔の知人 I さんのお墓参りに行った。9年前に51歳で亡くなったので九回忌。でも私が行くのはこれが初めてである。 I さんとは、25歳くらいの頃、高校時代からの友人が彼氏と一緒にやっていた居酒屋で初めて会った。友人は、「こちら、私の…

痴漢と心太

高校一年の頃(かれこれ34、5年前)、朝の通学時に同じバス停から同じバスに乗る中年の男がいた。バスの座席はいつも6割方塞がっており、その人が私の隣に時々座ることを最初はあまり気に留めていなかった。 ある日、隣に座った男は新聞を広げた。その肘が…

「アンネ・フランクの家はあっちだよ」

赤の他人が私に話しかける Brittyさんのような美味しい目にあったことはないけど、ヨーロッパを旅行していると話しかけてくる人は時々いるなあと思った。 昔、アムステルダムの小さな通りでお目当てのギャラリーの番地を地図で探していた時、向こうからやっ…

母の色眼鏡と娘の業

たまに実家に行くと、母が昔の写真などを整理していて、 「ねえ、これ見てごらん。あなたが小学校入った時。お下げにして、かっわいいでしょう? ほらこれ、六年生の時の。まあ足も腕も細くてかわいいことねぇ。これ中学三年生よ、ほら笑ってる、か〜わい〜…

「ねぇ、どうして?」の子ども

娘にある言葉を教えた話 - 深く考えないで捨てるように書く 子どもというのはどこで覚えてくるのか、「あっそれ人前で言わないでー」って言葉を平気で大声で口にして、大人をハラハラさせるという話。コメント欄も含めて面白い。 ただ私には子どもがいないの…

やりきれない (付記2を追記しました)

彼女は、カラオケスナックのママさんだった。 店は、私の家から車で7、8分のところにあった。夫は近くに住む中学時代の恩師に連れられて行ったのが、初めらしい。もう4年くらい前の話だ。 しばらくして私も誘われた。カラオケスナックなんてそれまでほと…

ある掲示板での出来事

もう何年も前の、ある私設掲示板での出来事である。 何人かの人が毎日、さまざまな議論に参加していた。特によく書き込みしていたのは、A氏、B君、Cの三人。 ある時、Dという人物が現れた。彼の書き込みは、A氏と掲示板の議論を一方的に中傷するものだった。…

『星の牧場』と近所のゴッホさん

風邪気味だったりして頭があまり働かない時に、よく子どもの頃に読んだ本を読み返す。今日は『星の牧場』を読んだ。小五くらいの時に学校の図書館で借りて読んでから、何度か読み返している本。児童向けとなっているが、大人でも充分面白く読める。むしろ大…

躓きの石とともに

「子供」(ドロシー・ロー・ノルト) この詩は、以前仕事していた短大の保育科の教室に貼ってあるのを見たことがあり、その時は「ふーん、子供は褒めて伸ばせってことか。でもなんか説教臭くて好きじゃない」くらいにしか思わなかった。 で。改めてこの詩を…

アネゴさま

昔 古い知り合いで、ショーコさんという五十代半ばの女性がいる。彼女は昔、名古屋でハックフィンというライブハウスを運営していた。 80年代、名古屋にはロックのライブハウスがいくつかあって、その中ではハックフィンはパンク、ノイズ、ニューウェイブ系…

誰にも嫌われたくなかった

観察者と当事者 高校のときいつも一人の女の子がいた(Say::So?)※ブログは閉鎖されました 教室で独りで本読んでた私が鬱陶しく思った人(素晴らしい人的行動(うどんこ天気) 「自分嫌い」が許される性(しあわせのかたち) 一番目は、クラスの中で孤立気味…

ピンク・ピンク・ピンク

だってかわいいもん 以前、短大の保育科で図画工作の実技授業を数年受け持っていたことがあった。保育士や幼稚園の先生になる人に、指導案を立てさせさまざまな課題をやらせながら、現場でどういう手ほどきをしたらいいかアドバイスする授業である。 私は保…

率直な男

「俺、それじゃモテないってよく言われるんだわ」 と、その男は言った。 「で、じゃあどうしたらモテるんかつって後輩の女の子に聞いたんだ。そしたら、そのブッキラボーでオッサン臭い言葉遣いと名古屋弁を直して、もっと女の子の話題に合わせて、服装もそ…

コミュニケーションの下手な女

アート系女子 コミュニケーション(恋愛篇)で記事を書いたら、20人近くにブックマークされていた(http://b.hatena.ne.jp/entry/www.absoluteweb.jp/ohno/?date=20060422)。私の記事の中では多い方。 それで改めてブログを巡回してみたら、皆さん(おもに…

出題バトル

水と穴 前記事に引き続き、美大受験ネタでもう一本。 入試に出るモチーフというのは、大学、科によって様々である。石膏像、静物、人物、動物。日本画科は静物が多いようだ。モチーフ台の上に、ガラス容器や花や果物などがセットされている状態を描くのであ…

三月の兎

受験狂騒 春は木や草が芽吹き日差しが暖かくなって、何とはなしに心浮き立つ時期である。しかし受験生やその関係者にとっては、一喜一憂するシーズン。 大学卒業後から三十代の半ば頃まで、名古屋の美術系予備校K塾で実技の講師として働いていた期間、やはり…

楽しい共学時代

中学の屈辱 私の中学時代はジェンダーという言葉もまだない、70年代前半の昔である。テレビでは、スポ根ドラマや学園ドラマが人気だった時期。 学園ものでは、喧嘩が強いガサツな男子、秀才くん、か弱い美少女といった布陣に、可愛くて気の強い女子というも…